一流の仏師は仏像を彫り続けるうちに仏像を彫ると言うより、木の中から仏を探し出すといった境地に至るそうだ。 人の心の深淵に手を伸ばし、手探りで触れようとしているかのような小川深彩監督の作品を観て、 仏師のそれを思い出した。 確信を持って言えるのは、彼女の瞳がすでに深淵を捉えているということだ。 早熟という安っぽい言葉で片付けられない、驚くべき才能である。 平谷悦郎(脚本家・ライター)